会社のデータとAI
貼っていいのか分からなくて、手が止まる。その線引きと、社内での進め方をまとめました。
ここに書くのは、あくまで一般的な考え方の整理です。正解はあなたの会社の規定にあります。このページは、規定を読むときと、情シスに聞くときの下準備として使ってください。
ダミーデータなら、今日から試せる。
本物のデータを渡さなくても、練習はできます。作ってから相談する。これがいちばん通りやすい順番です。
このページは、法律や社内規定の解釈を示すものではありません。
会社ごとに規定は違います。ここに書いた区分はあくまで考え方の目安で、最終的な判断はあなたの会社の規定と、情報システム部門(情シス)・上司の判断が優先します。迷ったら、貼らずに聞いてください。
貼ってよい・匿名化すれば可・貼らない
AIに渡してよいかどうかは、だいたい3つに分けられます。まず、いま手元にある情報がどれに当たるかを見てください。
すでに外に出ている情報
- 公開されている製品情報・法令・一般的な業務知識
- 自分で書いた文章の、書き方の相談
- 自分で作ったダミーデータ
- 会社名や固有名詞を外したエラーメッセージ
- 「こういう表を作りたい」という形だけの相談
形は使いたいが、中身は渡せない情報
- 氏名は「顧客A」「担当B」に置き換える
- 取引先名は「B社」に置き換える
- 金額や日付は、桁と形だけ残して値を変える
- 件数だけを渡し、明細そのものは渡さない
形式だけ渡して、中身は渡さない。これが匿名化の考え方です。
取り返しがつかない情報
- 氏名・住所・電話番号・メールなどの個人情報
- 顧客リスト・取引先リスト
- 未公表の決算・人事・給与の情報
- 契約書や見積書の原文
- APIキー・パスワード・社内システムのURL
- 他社から預かっている秘密情報
一度貼ったものは、取り消せないと考えてください。
「あとで消せばいい」は成り立ちません。判断がつかないものは、貼らずに残しておいて、聞いてから決めれば十分に間に合います。
迷ったときの、4つの問い
どの区分か決めきれないときは、上から順にこの4つを自分に聞いてください。3つ目で止まったら、4つ目へ進みます。
- 社外の人に、そのまま見せられるか
見せられないなら、そのままの形では貼りません。ここで止まったものが、匿名化か「貼らない」の候補です。
- 名前と数字を外しても、目的を果たせるか
たいていは果たせます。書き方の相談も、集計の相談も、中身が架空でも同じ答えが返ってきます。
- 会社の規定に、書いてあるか
「生成AIの利用」「クラウドサービスの利用」「情報の取り扱い」あたりに書かれていることが多いです。
- 書いていなければ、聞く
書いていない部分を自分の解釈で埋めないこと。聞くのが最短です。確認メールの下書きはAIに作らせられます。
会社で使うときの進め方
いきなり「会社でAIを使わせてください」と切り出すと、たいてい止まります。相手には判断材料が何もないからです。順番を変えると通ります。
- 自分の裁量で終わる仕事を1つ選ぶ
自分が作って自分が使う資料、自分あての情報整理。許可がいらない範囲から始めます。
- ダミーデータで作って、動かす
本物のデータは使いません。列の名前と形だけ同じ架空のデータで、仕組みは十分に作れます。ダミーデータづくり自体もAIに頼めます。
- 短くなった時間を数える
「毎週90分かかっていた作業が10分になった」のように、数字で言えるようにしておきます。
- 成果を見せてから、相談する
動くものと数字を持って「これを本物のデータでやってよいか」を相談します。判断材料がある相談は通りやすくなります。
情シス・上司への説明の型
相手が知りたいのは、次の4つだけです。ここに答えられれば、話は前に進みます。分からない項目は「確認します」と正直に書けば十分です。
何を使うのか
- サービスの名前と提供元
- 何の業務に、どう使うのか
どの情報が、どこへ行くのか
- 渡す情報の範囲(個人情報や顧客データを含むか)
- 送信先はどこか
学習に使われるのか
- 入力した内容が学習に使われる設定になっていないか
- 設定で変えられるのか
止め方はあるか
- やめるときに何をすればよいか
- 入力した内容は消せるのか
私は非エンジニアの会社員です。(サービス名)を業務で試したいので、情報システム部門へ確認のメールを送ります。 次の内容を、社内メールとして失礼のない短い文章にしてください。 1. 使いたいサービス名と提供元、何のために使うか(業務は「(業務名)」と書いてください) 2. 渡す予定の情報の範囲(個人情報と顧客データは渡さず、ダミーデータで試したいこと) 3. 確認したいこと(利用してよいか、入力してよい情報の範囲、社内で決まっている手順があるか) 4. いつまでに返答がほしいか 長くしないでください。相手が「はい/いいえ」で答えられる形にしてください。
次に貼るのは、私の会社の(規定名)です。 この規定を読んで、次の3つを箇条書きで整理してください。判断は規定に書いてあることだけに基づき、書いていないことは「規定に記載なし」と書いてください。あなたの推測は入れないでください。 1. 外部のサービスへ入力してよい情報 2. 入力してはいけない情報 3. 事前の申請や承認が必要になる場合 最後に、規定に書かれておらず、私が情シスへ確認すべき点を挙げてください。
規定そのものが社外秘のことがあります。
社内規定を貼る前に、「この規定を外部のサービスに入力してよいか」を先に確認してください。順番を間違えると、規定を守るための作業で規定を破ることになります。判断がつかないときは、貼らずに聞くのが正解です。
ここだけは人間がやる
AIに任せない調べるのも下書きもAIに任せられます。ただし、次の4つは必ずあなたが決めます。ここが、会社で安心して使うための線引きです。
- 規定の最終的な解釈 — 「これは渡してよい」の最終判断は、AIの要約ではなく、規定の本文と情シスの言葉で決めます。
- 情シス・上司への相談 — 送る前に、下書きを自分の目で読みます。会社の事情を知っているのはあなただけです。
- 本物のデータを渡すかどうか — ダミーから本番へ切り替える判断は、許可を得たあとのあなたの仕事です。
- 社外への持ち出しの可否 — 資料や規定そのものを外部のサービスへ入れてよいかは、貼る前に確認します。
聞き方を、そのまま持っていく
線引きも、説明の文面も、ひとりで考えなくて大丈夫です。そのまま使える頼み方を置いておきます。
AIへの頼み方例
実在する社名・顧客名は入れずに、( )の中だけ置き換えて使ってください。
この業務で扱う情報を、そのまま渡してよい・匿名化すれば渡せる・渡してはいけないの3つに分けて
迷ったときの仕分けにこの表と同じ列の並びで、架空のダミーデータを20件作って
生成AIの業務利用について、上司に相談するときの説明を3行にまとめて
この作業をAIに任せた場合、毎月どれくらい時間が短くなるか計算して
相談材料づくりに
AIにこう聞いてみよう
私は非エンジニアの会社員です。(業務名)をAIに任せたいのですが、会社のデータを扱ってよいのか分からず止まっています。 次の順で整理してください。 1. この業務で扱う情報を「そのまま渡してよい」「匿名化すれば渡せる」「渡してはいけない」の3つに分ける 2. 匿名化するなら、どの項目をどう置き換えればよいかを具体的に示す 3. 本物のデータを使わずに試せる、ダミーデータの作り方を教える 4. 私が情シスへ確認すべきことを、そのまま送れるメールの下書きにする 会社の規定が優先されることを前提にしてください。断定はせず、確認が必要な点は「確認が必要」と書いてください。
あわせて読むレッスン
このページは一般的な考え方の整理です。法務・コンプライアンスの助言ではありません。最終的な判断は、あなたの会社の規定に従ってください。